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鎌田恭幸氏【鎌倉投信】21世紀を生き抜く価値ある企業像

21世紀を生き抜く価値ある企業像
鎌倉投信株式会社 代表取締役社長 鎌田恭幸氏
こんな多額の費用を要する事業は「絶対やめとけ」、このタイミングで創業するのは「無謀だ」と元同僚達にいわれながらも、ブレることなくリーマン・ショック直後の2008年11月に投資信託の委託会社を立ち上げたのが鎌田恭幸氏(鎌倉投信株式会社 代表取締役社長)だ。「社会を豊かにする「いい会社」を応援し、その結果で顧客の資産をふやす」という理想を掲げ、株価ではなく、経営者の人間性や会社の経営理念等を大切にする鎌田氏の言葉は哲学者か、はたまた思想家、あるいは文学青年のようだ。鎌倉で古民家の本社を構え、鎌倉投信を支援する企業経営者らから学びながら、業界常識の打破に挑戦し続ける鎌田氏はあなたに問う「何のために事業をしているか?誰のためにやっているか?共感の連鎖を起こせるか?」と <編集部より>
株式会社シーエフエス 特別講演にて。
世の中では儲からない投資が大多数
鎌倉投信は、「結い 2101(ゆいにいいちぜろいち)」という公募の投資信託の設定・運用と販売の仕事をしています。投資信託(公募)は、多くの方々から大切なお金をまとめてお預かりし、それを株とか債券、不動産等に投資をして、お客様の資産を増やすことを目的とした金融商品の一つです。
しかし、世の中の投資信託の多くは、短期的に売ったり買ったりする中で利益を得ようとします。利益を得た投資家がいる一方で、反対側には必ず損をする投資家がいて、市場全体としては価値が生れていないというゼロサム・ゲームになっています。鎌倉投信はそうした投資は目指していません。100年続く投資信託で300年続く「いい会社」をふやす、それによって豊かな社会をつくることテーマにしています。売り抜く投資ではなく、応援する投資、育てる投資を目指しています。
リーマン・ショック直後に創業
創業したのは2008年の11月でした。リーマン・ショックが2008年の9月ですから、その2ヶ月後、金融市場が混乱するさなかに会社を起こしたわけですから、金融業界の常識的な感覚からすれば無謀だという人がいたのもうなずけます。
「結い 2101」の運用と販売を始めて4年が経ちました。鎌倉投信は雑誌や新聞広告などのメディア媒体を活用した広告宣伝は行っていませんが、お客さんは順調に増えて、現在8千人ほどになりました。小さな座談会のような説明会を毎週のように、繰り返し、繰り返し開催してお客さんを増やしてきました。その過程でSNS等のソーシャル・メディアを通じて口コミでお客さんが増えたり、新聞や雑誌に掲載されたりしたことによって認知度が広まってきました。
いちばん若いお客さんは0歳、最高齢は90歳くらいです。以前、80歳ぐらいのお婆ちゃんが「私の老後のために投資する」といって下さったこともあります。そういう元気な投資家には勇気づけられます。
運用資産は、直近で106億円くらいでしょうか。始めた当初はわずか3億円からのスタートでした。この間、欧米の財政危機や東日本大震災があったり、さまざまな混乱があったりしましたが、その中でも資産は着実に増えてきました。
今日の講演テーマは「21世紀を生き抜く価値ある企業像」です。鎌倉投信は見た目には順調にお客様や運用資産が増えていますが、まだ創業5年にも満たないベンチャーで、経営は赤字が続いています。デスバレーのどん底からようやく這い上がってきたという状況ですから、私自身あるいは鎌倉投信の成功体験を語ることはできません。この5年間金融の世界で鎌倉投信が一所懸命に取り組んできた挑戦の軌跡と、そこで出会ったたくさんの素晴らしい経営者の皆さんから学んできた考え方や価値観等の事例をご紹介したいと思います。
いい会社をふやしましょう
鎌倉投信の合言葉は、「いい会社をふやしましょう」です。その想いは一貫してブレていません。会社を立ち上げる時、「お前たち、そんな甘いこといってて本当に運用結果をだせるのか?」と何人もの人にいわれました。最近になって、社会性のある会社こそが持続的に利益を生み続けることが徐々に認知されつつあるように思いますが、2008年当時はまだそういう実感はありませんでした。しかし社会の見方が、東日本大震災の前と後とでは明らかに変わったように感じます。
「社会性のない会社はもはや永続的に利益を生み出すことができない」それを資産形成という形でも示していかなければならないと考えました。