戸成司朗氏【中部プロボノセンター】プロボノ活用に企業人の力を
プロボノ活用に企業人の力を
「公共善のために」を意味するラテン語「Pro Bono Publico」を語源とし、「社会的・公共的な目的のために、職業上のスキルや専門的知識を生かしたボランティア活動」を意味する「プロボノ」。その「プロボノ」をもっと社会に広めようと、愛知県を拠点に、複数企業の連携で設立されたのが「中部プロボノセンター」。「在り方大学」今回のゲストは、同センターの共同代表理事を務める、戸成司朗氏である。
戸成氏は、「行政などの公的支援“公助”で支えてきた社会構造が限界を迎えつつある現在、地域の方々と助け合う“共助”が次の手段となるだろう。“共助”を新しい公共と捉えた時、それを担うのがNPOではないか、そのNPOを企業としていかに支えるか」、それがセンター設立の出発点と語る。<編集部より>
戸成 司朗氏 NPO法人 中部プロボノセンター 共同代表理事
研修で架空のNPOを設立。「将来必ず実現する」と宣言
戸成 司朗氏 NPO法人 中部プロボノセンター 共同代表理事(以下、戸成): 私自身、以前はスーパーマーケットチェーン「西友」の執行役員でした。
役員在任時に、日本のいろいろな企業からメンバーが集まってきて、そこで経営者としての勉強をする研修に派遣されました。
その研修には、チーム編成を行い、与えられたテーマについて、各チームで最終的に発表を行う取り組みがあったのです。
私が入ったのは、新日本製鉄さんとか、東急さんとか、東京電力さんとか、日立さん、NTTさんなど8人のチームでした。私がチームリーダーで、「チームミチ」というチーム名をつけて。
ARTS&WEB株式会社 代表取締役 松浦法子(以下、松浦): 「ミチ」ですか?
戸成: 「未知の世界」の未知ですね。「未知との遭遇」の未知。研修では、その「チーム未知」で研究に取り組みましたが、与えられたのが「21世紀の組織」というテーマだったんです。
研究過程で、私たちは初めて「NPO法人」(特定非営利活動法人)の存在を知りました。NPO法人「かものはしプロジェクト」の共同代表、村田早耶香さんにお会いして、このような世界があることを学んだ訳ですね。
その中で、私たちはNPOというものを「21世紀の新しい組織」として、研究をしようと。
では、どのようなNPOを作るのか、ということで、「今の日本社会で、そもそも幸せなのか」というところから入ったんですよ。
松浦: すごいですね。
戸成: その当時、1年間で交通事故の死者数が1万人を切る中で、自殺者が3万人ある社会って本当に幸せなのか、という議論がありました。同時に、このまま少子高齢化の流れが加速すれば、日本社会はこれから本当に維持していけるのかどうか、という議論もありました。
もう一つが、団塊の世代(一般的には、第二次世界大戦後の1947年~1949年に生まれた人たちとされる)が間もなく企業の第一線からリタイアしていった時、団塊の世代の生きがいとは何だろうか?という問いでした。
そういう議論をしていく中で、「じゃあ、NPOを団塊世代の人たちが持っている、企業で得た知識やノウハウを提供することによって、NPOを支援できないだろうか。それをマッチングする団体が作れないだろうか」という議論に行き着きました。
研修では「NPO法人 未知」という仮設のNPOを立ち上げて、その「未知」が、「団塊の世代をマッチングして、NPOへ送り込む」という機能を持ったNPOを作る、という研究論文を発表しました。
最終的に、研修の発表会では大変優秀な論文として、高い評価を得ることができました。
山城経営研究所としての研修はそこで終わりましたが、私はチームの皆に、「将来必ず、このことを僕が実現したい」と宣言したのです。
NPOを一から学び、新たな拠点での出発
戸成: その後、私が西友の執行役員を退任させていただくことになり、愛知県日進市の自宅に帰ってきました。「さて、このNPOの実現に向かってどうしようか」ということで、まずは一からNPOの勉強を始めたのです。
その時に、教えていただいた先生が、“企業や行政とNPOをつなぐNPO”を掲げるNPO法人「パートナーシップ・サポートセンター」の代表理事、岸田眞代さんでした。岸田代表理事からは、NPOについていろいろ教えていただきました。
その時ちょうど、岸田代表理事から、当時の東海ゴム工業株式会社ですね、現在の住友理工株式会社が、社会貢献部署を立ち上げたいので、人材を探しているというお話をいただいたのです。
私も、自分の実現したいNPOをこの地域で作るのに、そもそも地元でネットワークを作らないとと実現できないだろうと考え、「では、まず東海ゴム工業の経営者にお会いしましょう」ということで、「お見合い」をしました。
そこで意気投合して、お互いに約束を一つずつしたんです。
私からの会社へのお願いは、「私の好きなようにやらせてほしい」と。
逆に会社側への約束は、「3年で、東海ゴム工業の社会貢献体制を整えます」という約束をしました。これが始まりです。
「プロボノをNPOに送り込む団体を」と中部プロボノセンターを設立
戸成: お陰様で東海ゴム工業では、さまざまなNPOの皆さんたちと共同のプログラムを立ち上げました。その中で自身のネットワークが広がりました。
気がついたら4年が過ぎていた、と印象です。
そこで、元々自分のプランだったNPOを立ち上げようと。すると、「プロボノ」というものが日本にも登場していたんですね。当初、我々が考えていた時には、プロボノは日本にはなかったんですよ。
ところがプロボノが出てきて、「私が考えているNPO支援と一緒だな」と思い、「じゃあ、プロボノを送り込む団体を作ろう」と考えたのです。
そこで、私の友人である、株式会社デンソーの岩原明彦さんと、公益財団法人 中部圏社会経済研究所の小林宏之さんに「中部プロボノセンターを立ち上げたいんだ」とお声掛けしました。3人で「ぜひやろう」ということになり、ほぼ1年をかけて作りました。これが、中部プロボノセンター立ち上げまでのいきさつです。
松浦: 感動してしまいますね。私もずっとプロボノについては勉強を重ねてきて、「どうして愛知にないんだろう」と思っていました。
しかし、調べていくと、こんな素晴らしいお三方の尽力により、プロボノ組織が立ち上がっている。それを知り、「他の地域とは全然レベルが違うぞ!」と、とても感動しました。
NPOとして新しいビジネスモデルを構築
松浦: センターを立ち上げられて、一番最初にされたのは、どのようなことでしたか?
戸成: まず、NPOと言えども、「中部プロボノセンター」のビジネスモデルが必要だと、そこが出発点でした。では、どのようビジネスモデルで中部プロボノセンターを運営するのか、ということが最初の議論ですね。
その時に考えたのが、企業にスポンサーとなっていただき、中部プロボノセンターは、企業の社会貢献・CSR(企業が社会に与える影響に責任を持つこと)と、人材育成を請け負うという形です。
企業からは、人材の提供に加え、中部プロボノセンターの運営資金も出していただく。
その上で、NPOには無償で支援を行う、というビジネスモデルを考えた訳です。
次に、各企業から預かった人たちをどうするか。
ここが一番重要で、2つの視点で研修をしなくてはいけないと考えました。
一つは、企業人として企業の中で生きてきた人たちが、NPOの人たちとどうやって共感できるのか。
そのためには、企業人の方々には、NPOの理解を含めて、今の社会で何が起きているのか、何が社会課題なのかということを、まず学んでいただこうと。
2つ目ですが、企業人がNPOを支援する活動を行った場合、結果が出ないと意味がないと私は思ったのです。
そうすると、プロジェクトを確実に進行させていくためのスキルが必要になります。
企業人は、もちろんいろいろなスキルを持っていますが、プロジェクトを進行するためのスキル、例えばマーケティングであったり、それからプロジェクト管理だったり、そう言ったものを、この機会にもう一度身につけていただこうと。
また、このビジネスモデルでは、企業からお金をいただきます。企業の立場を考えた時、これを投資と考えると、リターンは何か。お預かりした社員が、非常に社会感度の高い人材となって企業に戻っていただくことが、企業に対する見返りだと考えました。
日本初!コース型のプロボノを提案
戸成: 「プロボノ」と言った時に、実は2通りあるんですよね。
「アラカルト方式」と私は整理していますが、法務や経理、IT(情報技術)などついて、企業人が個別にNPOの相談に応じる、一般的な方式。
しかし、中部プロボノセンターとしては、コース型のプロボノを提案しようと。
松浦: 日本初の試みですよね。
戸成: NPOに対して、セットメニューを提案しようということで、私たちは5つのメニューを用意しました。
1つ目が事業戦略支援。2つ目がブランド戦略、ブランディングですね。3つ目が業務改革、4つ目が業務マニュアルです。最後の5つ目が、協働プレゼンテーションのプログラム構築ですね。
なぜ、これらの5つの項目を選んだのか。それは私がここ数年間の経験から、この5項目が、NPOにとって一番弱い点かなと思ったからです。
NPO団体には、この5つの中から選んでいただき、チームでセットメニューを提案するという形のビジネスモデルを考案しました。
ただし、これから中部プロボノセンターが成長していく過程で、当然、プロボノメンバーのさまざまなデータが蓄積されていきます。
研修を終えたメンバーの実績などを活用して、今後はアラカルトの要望に対しても応えていくように、次の段階を考えています。
松浦: 一番最初の支援団体さんはどちらでしたか?
戸成: 一番最初に支援したのは、NPO法人全国福祉理美容師養成協会(略称: ふくりび)さんですね。
福理美さんは事業の一つで、がん患者・脱毛症患者向け医療用ウィッグの製造・販売を手掛けておられますが、当センターのチームが支援したのは、その医療用ウィッグの事業戦略でした。
これが1期生、最初のチームです。
松浦: どこで、どのように、「ふくりび」さんからご依頼があったんですか?
戸成: 「ふくりび」さんは、私も理事をさせていただいています。
初めてのチームで、ある意味パイロットプログラムですから、最後にうまくいかなかった時に、「ごめんね」と言えるところを選びました。
松浦: パイロットプログラムにしては、素晴らしいメンバーが揃っていらっしゃったと思いますが。
戸成: 「うまくいかなかったね」って言える相手じゃないと、まずいなと思いまして。
松浦: そういった裏のご苦労もあったのですね。
でも、結果は大成功でしたね。私も「ふくりび」さんには研修で伺いましたが、「素晴らしい」を超えて、「あそこまではあり得ない」というほどの成果を挙げられました。
戸成: 実際に、最初のチームのレベルは非常に高かったと思います。
松浦: すばらしいですね。ネタ的にはちょっと面白いです。
「自分たちで地域を守っていく」時代の到来
松浦: 1年目の活動が始まった当初と、3年目の活動が始まった時と、課題の見え方が違ってきた点はありますか?
戸成: 最近感じているのは、私たちが当初持っていた志が、ある意味ちょっと高すぎたのかな、ということです。プロボノとしては、いきなり大学生クラスのプロボノに最初から挑戦してしまったのかな、と。
これでは、「プロボノしたいな」という人たちにとっても、少しハードルが高い。
それから、支援を受けたいと思っているNPOさんにとっても、ハードルがちょっと高い。
もう少し、高校生レベルで対応できるもの、逆に中学生レベルのプロボノというように、プロボノメンバーとして入ってくる時のハードルと、NPOさんも支援に手を挙げる際のハードルを少し下げたメニューの開発が必要だなと。
それが、入門編として、先ほど申し上げたアラカルト方式のプロボノから入っていただいてもいいのかな、という風に最近は感じています。
松浦: 一番最初に接点のあったNPOとして、先ほど「かものはしプロジェクト」さんのお話をされていましたが、中部圏に戻られて、地域差を感じることはありますか?
戸成: 正直、感じましたね。やはり、東京は若い人たち、それも大学時代から考えているような若い世代のNPO団体が、特に社会起業家と言われている人たちがたくさん育ってきています。
愛知県に来た時に、一番感じたのはボランティアからスタートして、第一世代と言ったらいいんでしょうかね、自分たちのように、セカンドライフというか、第二の人生としていろいろな社会的な課題に取り組もうとされた人たちが、さまざまな活動をされた後にそのまま年をとられて、なかなか世代交代が進んでないのかなという感がありました。
同時に、若い社会起業家もいらっしゃるけれども、まだ少数かなという気がしましたね。
松浦: 今、東京や大阪では、「NPOが淘汰される」と言われていて、どんどん危機を感じているじゃないですか。
愛知県では、NPOの方々はそのような危機感を一切感じていらっしゃらないように思います。
その辺りは、東京は東京、大阪は大阪と言った感じでしょうか。反面、名古屋も淘汰の波に飲み込まれてしまうのではないか、という心配もあります。戸成さんはこの点について、どのようにお感じでしょうか。
戸成: 実は、NPOの動きを見ていると、東京・大阪型の、どちらかというと「社会起業家」型のNPOと、各地方で起きている、「自分たちで地域を守っていくんだ」という形のNPOと分けられるのかなと思います。
東京や大阪の、社会起業家中心のNPOは、多分ビジネスの世界と同じで、生き残り競争に入っていくんだろうと思います。
しかし、地方で起きている、自分たちの手で自分たちの地域を守っていくという活動はこれから、行政の手がますます回らなくなることは予想される中で、活発化してくるのかなとも思うのです。
今、地方で起きている問題は、10年後には愛知県の問題
戸成: そうすると、愛知県の一番の課題は、愛知県の地方行政体が、まだ豊かだということです。若い社会起業家型NPOがなかなか出てこない中で、地域を自分たちで守ろうとする「地域型NPO」が愛知県で生まれ、育っていくのかと言うと、逆に、愛知の場合には、行政が豊かなだけに、危機感に差が出るのかなという気がします。
地方の県に行くと、もう自分たちで立ち上がらないと、地域自体が維持できなくなってきているところもあります。しかし、愛知県はまだ行政がそこをカバーできている。
ただ、今後カバーできなくなってくることは間違いない。ですから、現在、地方で起きているさまざまな問題、これは愛知県の10年後の姿という風にも感じられるのです。
松浦: 今まで取材してきた中で、全然感度の違うご意見です。
私自身、最近ではいろいろなNPOの方とお会いする機会があります。今までは東京とか大阪とかのセミナーでは、いらっしゃってくださっている方と話したら、確かに別の地域ではそのような状況にあって、愛知県の方はちょっと感度が違うのかと感じていました。
ですから、戸成さんが今まとめてくださったことを、「そうだよね、そうだよね」って聞いていました。
戸成: 愛知県はどちらでもないんですよね。社会起業家型が誕生して来るわけでもないし、本当に地域を守らなきゃって出てきているNPOでもないし、その中間なんですよね。
松浦: その狭間で、SDさんがちょっと困っている感じにちょうどなっていますね。確かに、確かに。
この地方で起きている10年後の愛知というところを見据えて、中部プロボノセンターの今後の課題じゃないですけど、進むべき道をどのようにお考えですか?
戸成: これは、非常に難しい問いですね。
実は愛知県でも、東三河地域の山間部などでは、地方で起きているような問題が発生しています。もうすでに起きているんですね、地域が成り立たないということが。
ですから、「愛知県」って一括りにしちゃうと、豊かな反面、特に東三河の山間部に行くと地域の存続が問われる事態が起きているのです。
我々はこれらの問題を含めて、どのようにこの後取り組んでいったらいいのか、正直言って迷っているところですね。
愛知の中で、都市型のNPOを支援するべきなのか、そういう「地域を支えていく」NPOなのかを含めて、私たちはどちらも支えなければいけない。非常に悩んでいるところですね。
松浦: じゃあ、ますます成長する方向で、それで決まっていくんですね。
ますます面白そうです。
戸成: 現に、愛知県新城市あたりに行くと、日本海側の県なんかで起きているような現象がもう起きていますよ。要するに、地域が維持できないのです。当然、いろいろなことが起きてくる訳ですよね。公共交通機関がなくなるとか。そのような状況の下、現実的にお年寄りが車社会で生きていけるのか。
それから、行政が広域化していく中で、山間地にまで手が回るのか。
そのような意味で、決して安泰とは言えない地域もある、表面的には豊かな愛知県。しかし、圧倒的に豊かな地域が多いんですよね。
しかしながら、果たして10年後にも豊かな愛知県でいられるのかどうか。
まず、10年後には年齢構成が当然変化してくるでしょうし、現在の団塊世代が後期高齢者になる時代が10年後ですから、その時に本当に支えていけるのか。課題は目前に迫っています。
社会があるから企業がある、その基本を広めていきたい
松浦: 戸成さんの所属先である、住友理工さんもそうですけれど、企業が、そこを支えなければいけないと動き出しているじゃないですか。愛知はちょっと動きが遅いですけれども。
企業と地域をつなぐ中部プロボノセンターさんがいらっしゃるから、私は安心だなと思っているのですが。
戸成: ただ、愛知県の企業は残念ながら、社会感度が低いと思います。やはり、一部の企業ですね。
「製品を通じての社会貢献」とは必ずおっしゃるのですが、製品を通じて社会貢献するのは企業が存続する上で当たり前のことです。製品で社会貢献できなかったら、企業自体が存続できないわけですから。
そうではなくて、愛知県の企業が考えなければいけないのは、社会が持続性、サステナブルであることが前提で、企業がサステナブルなんだと考えないといけない。
社会が持続性を持たない時に、自分の企業だけが持続性を持っているということはあり得ないことですよね。
それは、世界でも同じです。進出した発展途上国の社会の豊かさに貢献しない企業は、やはり生き残れないですね。
「社会があるから企業がある」のですから。
地域に受け入れてもらうことが、社会貢献の第一歩
松浦: では、その気づきをもっと愛知に起こしていかないといけないですね。
でも、中小企業さんとかは、いろいろな団体に属しておられて、「CSR活動をやらなきゃいけない」って、実際に何か動いているのかな、どうなのかなとこちらは思いつつ、「やらなきゃいけない、やらなきゃいけない」と声を高らかに言っておられるじゃないですか。
そこをどう底上げしていくかということに対して、何かできないでしょうか。
戸成: 中小企業さんの場合ね、そんなに大上段に構える必要はないと思うんですよ。歴史のある企業って、どこにも必ず家訓ってあるんですよね。家の。ほとんどの場合、家訓には、現在のCSRに通じることが入っているんですよね。
とすると、中小企業と言えども、中小企業の場合にはどうしても家業になると思いますが、存続・持続可能性を持とうとすれば、地域社会に受け入れていただなかなければ、それは望めないと。
ですから、地域に受け入れてもらうことが、社会貢献の第一歩だと思いますけどね。そんなにお金をかけなさいということではないと思います。
だから、中小企業の皆さんがCSRや社会貢献と言うと、大企業の道楽みたいに思っている人がいらっしゃるかもしれませんけれど、そうではなくて、家業を存続させるために、地域社会と共存していくってのは当たり前のことですよね。
松浦: 素敵な言葉ですね。大事なこと。ありがとうございます。これはとても響く言葉だと思います。CSR活動とかを見てていても、表に出てくるのは有名な大企業さんのお名前ばかりじゃないですか。
「所詮CSRをやっても」と思っていらっしゃる中小企業さんが、現実的には多いです。
これを言われて「家業を・・・」とかそう言ったことを頭で分かっていても、「所詮」って思っていらっしゃる方が多いように見受けられます。
反対に、戸成さんのような立場の方から見て、そういうお言葉をいただくということは、今後の期待がもっと見えてくるんじゃないのかな、と思うんですよね。
戸成: 地方でね、老舗と言われている企業は皆さん、その地域に対してさまざまな形で、大きな貢献をされてきていますよね。
人材育成として、今でいう奨学金ですよね、地域の優秀な子供たちを昔で言う旧制中学に行かせると言ったことは老舗企業の皆さんは当然おやりになっていらっしゃるし、地方の老舗がやった地域の事業は、いっぱい歴史に残っていますよね。
面々と続いている老舗の企業は、地域にちゃんと根差してた活動をしていらっしゃる。ですから、生き残って来られたのだと思います。
松浦: 確かに、中小企業もがんばれそうです。
社会貢献は、社会的投資である
戸成: 私は社会貢献を、「施し」や「慈善事業」だとは思ってはいません。これはどこでもお話ししますが、社会貢献と言うのは、社会的投資だと思っています。投資である以上、リターンが必要です。
それは何かと申しますと、社会課題が具体的に解決されること。それから、企業が地域から信用・信頼されること。これがリターンです。
慈善事業や施しというのは、これは完全に上から目線です。企業が地域から信用・信頼されれば、必ず返ってきますからね。
昔から言うじゃないですか。「情けは人のためならず」。
松浦: そうですね、でも、その「情けは人のためならず」をちゃんと理解している人も少ないと言われています(本来の意味: 人に情けを掛けておくと、巡り巡って結局は自分のためになる)。
戸成: そうそう、びっくりしたんだけどね。
情けは人にかけちゃダメよ、その人のためにならないということですよねっていうから、おいおい違うだろうって。
(2010年度の文化庁「国語に関する世論調査」では、「人に情けを掛けて助けてやることは、結局はその人のためにならない」と45.7%が回答)
松浦: 2015年度下半期放送の、NHK連続テレビ小説「あさが来た」でも言っていますよ。「情けは人のためならず」って。
本日は、いいお話をたくさんありがとうございました。
プロフィール 戸成 司朗(となり・しろう)氏
住友理工株式会社 CSR・社会貢献室長
NPO法人 中部プロボノセンター 共同代表理事
1948年生まれ。35年間、スーパーマーケットチェーンの西友に勤務。2007年、執行役上席副社長を最後に退任、その間に日本チェーンストア協会の初代社会貢献委員長を務める。
その後、自宅のある愛知県日進市に戻り、第二の人生を社会に貢献したいと、同年、住友理工株式会社(旧 東海ゴム工業株式会社)に入社。
同社に社会貢献推進室を設立し、室長に就任。NPOとの協働による社会課題解決型のプログラムをスタートさせている。
なお、愛知県では「プロボノ2016in愛知」として、プロボノに関するミニレクチャー、およびプロボノのもたらす効果について伝えるセミナーを2016年9月に、NPOでのプロボノ1日体験ができる「1 DAY ACTION」を2016年10月に実施予定です。
応募要項などの詳細は、中部プロボノセンターWEBサイト http://www.chubu-purobono.com/ をご覧ください。
インタビューア 松浦法子氏
在り方大学 代表
ARTS&WEB株式会社 代表取締役
プロボノ活動や地域活性化、教育関連にWEBプロモーションの知識経験を生かして、バックヤード側で活動している。
SEO(検索上位表示)対策や、サイト訪問者が初めに訪れるウェブページを工夫して成約率を高めるLPO(ランディングページ最適化)対策を中心に、集客できるスマートフォン対応型Web制作やコンサルティングを行う。同時に、全日本SEO協会認定ソーシャルメディアコンサルタントとして、ブログやfacebookなどソーシャルメディアをバイラルに活用するホームページ運営の提案も実施。
LINEやfacebookセミナーやソーシャルメディア活用セミナーの講師も務める。LINEに関する書籍などをこれまでに5冊出版。
http://arts-web.co.jp/