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社会技術といてのデザインについて
NPO法人 Deep people ディープピープル 理事長 理事長、株式会社 イノセンス 代表取締役、株式会社 アンウィーブ 代表取締役 牧文彦氏
社会に情報があふれ、人はそれを選択することしかしないし、それしか知らない。選択にはリスクがあるから迷う。これに対して「第三の道」を提唱するのが牧文彦氏(NPO法人Deep people ディープピープル 理事長、株式会社イノセンス 代表取締役、株式会社アンウィーブ 代表取締役)だ。それは、自らを変えることで環境を変えること。それを創る手法「ソーシャル・デザイン」とは?それを支える消費者の意識変化「スペンド・シフト」とは? <編集部より>
株式会社シーエフエス 特別講演にて。
「社会技術としてのデザインについて」
私はビジュアルコミュニケーションデザイナーです。チャップリンの時代のサイレント映画には音声がないわけですが、「身振り」「手振り」「素振り」だけでストーリーが完結しますよね。これをビジュアルコミュニケーションあるいはノンバーバルコミュニケーションと言います。言語を使わないわけですから、これを技術にすると世界共通のツールができます。どこの国に行ってもトイレを探すことができるのはサインのおかげですね。
アートとデザインの違い
学生らにもよく「アート」と「デザイン」はどう違いますか、と聞かれるのですが、全く違います。むしろ正反対です。アートは世界で唯一のものを創ることを使命としています。デザインは複製されることを前提に設計することです。
なのに、デザインを学ぼうとすると「芸術学部デザイン学科」とかになっていますが、本来は「社会学部デザイン学科」とか「経済学部デザイン学科」であるべきです。広告のビジュアルにアーティストを使ったりしますが、それは目立たせるために使っているのであって、そのアーティストがデザインしているわけではないので、誤解されがちです。
「デザイン料って何」とよく言われます。「印刷代に含めろ」とか「広告費に含めろよ」と言われます。私はデザインで飯を食っているのに払ってもらえない。ですから私は「コストパフォーマンスも含めた問題解決の費用なんです」と言っています。
「デザイン手法」とは?
デザイン手法は第三の道を創ることだと思っています。話がそれますが、大学の就職担当をしていたときは大変でした。これから何しようか、そもそも大学に何のために来たかわからない。そんな学生たちにもあれこれ教えて、行きたいという企業に就職できたのに、夏になると帰ってきてしまいます。「会社辞めたい」と。あんなに行きたいと言っていた会社なのに、嫌なことがあると、辞めるか嫌々続けるかの2択になってしまう。自ら変えていこうという発想がないんです。
いま情報化社会で情報があふれているので、情報は選択することしかない。それしか知らないわけです。選択にはリスクがあります。だから迷います。
これに対して第三の道というのは、自らを変えることで環境を変えるということです。自分のやりたいことを自分で創り出せばいい。新しい発想や概念の価値をカタチにしていく過程、それを「デザイン手法」と呼んでいます。
デザインの対象は、モノづくり、しくみづくり、場づくり、時間づくり、幸せづくり、皆そうです。カタチのあるものを創ることではなく、設計するということです。それを「ソーシャルデザイン」と言い、注目されています。
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