D×P理事長 今井紀明氏

若者が未来に希望を持てる社会へ

「在り方大学」のゲスト、今井紀明氏は高校生の時、イラクの子どもたちの医療支援NGO (非政府組織: 世界的な問題に対し民間の立場から、利益を目的とせずにこれらの問題に取り組む団体) を設立した。活動のため、18歳の時に紛争地域だったイラクへ渡航するも、現地の武装勢力に誘拐され、人質になると言う衝撃的な経験をする。解放され日本に帰国すると、待っていたのは社会からのバッシングであった。今井氏は対人恐怖症になり、精神的につらい数年間を過ごしたと言う。
現在、今井氏が代表を務める認定NPO法人D×P(ディーピー)は、高校生が進路未定のまま卒業することや、学校を中退することを防ぐための取り組みを行うNPOである。自らの社会的孤立を経て、なぜ、今井氏は現在の活動を始めるに至ったのか。<編集部より>

認定NPO法人 D×P(ディーピー)理事長 今井紀明氏

社会的孤立経験からのスタート

D×P理事長 今井紀明氏株式会社シーエフエス 代表取締役 藤岡俊雄(以下、藤岡): 始めに、現在取り組まれている活動の経緯を教えてください。

認定NPO法人 D×P(ディーピー)理事長 今井紀明(以下、今井): 「イラク 人質事件」がきっかけで、私は対人恐怖症やPTSD(心的外傷後ストレス障害)などを発症してしまいました。
生きて日本に帰ってくることができましたが、事件で有名になってしまったので、道端を歩いていると声をかけられることが数年間続きました。「死ね」と言われたり、本当に殴られたりと言うこともありました。
私はそれですっかりふさぎ込んでしまい、当時19歳でしたが、23歳ぐらいまで、精神的につらい時期を過ごしました。そこからのスタートです。

若者が自律的に未来を描けるよう伴走

認定NPO法人 D×P(ディーピー)理事長 今井紀明氏今井: 私たちは関西4府県と北海道で、10代の若者支援をするプロジェクトを動かしていて、この活動にはボランティアが150名ほど参加しています。

私たちは通信制や定時制の高校生に対し、2段階で支援を行います。まず、卒業後の進路決定を自律的に行うことを目的にした、キャリア教育プログラム「クレッシェンド」で人とのつながりを作ります。
授業で人間関係ができた後には、部活動や企業でのインターンシップなど成功体験を作ってもらいます。さまざまなことに挑戦したい生徒に対し、海外のスタディツアーなどに派遣することもあります。

学校で長期間の授業を持つのは難しいと言われていますが、私たちはさせていただいています。
「クレッシェンド」では、生徒たちと関わり、可能性を共に見つける存在として、大学生や社会人などの大人たち(同団体では「コンポーザー」と称する)に協力してもらっています。
コンポーザーとなる大人の方は、20歳~39歳で年齢制限しています。コンポーザーの方々は、ほとんどが社会人で、インターネットのみを通じて集まっているのが特徴です。
少人数クラスですので、関わる方々にも研修を受けていただき、学校の授業に出てもらっています。現在は、企業もそれに参加しています。

この授業を課外授業にしてしまうと生徒が来ない懸念がありますが、通常授業の中に組み込むことで生徒を集めているのが、私たちのこだわりです。
プログラムは、コンポーザーから過去の失敗談を聞いたり、学校や仕事の話を聞いたりして、次にそれを自分の進路に置き換えて考える形を取っています。生徒たちには、さまざまなバックグラウンドを持つ大人たちと継続的に話せる関係を作ることで、自分の過去や将来について自律的に考える力を身につけてもらうことをめざします。

また、授業後には部活動や女子会などさまざまな活動があります。普通の通信制高校に部活動はありませんから、そのようにして生徒と触れ合う機会を増やしています。
海外でのインターンシップへ派遣することもありますし、高校の進路決定率を上げる取り組みもしています。

社会的孤立してからの「支援」ではなく、その前に「予防」を

認定NPO法人 D×P(ディーピー)理事長 今井紀明氏今井: 私たちの事業収入は事業収入が4割、寄付が6割です。学校のコンサルティングを行うことで収益を上げています。
この内容は、限界集落(65歳以上の高齢者が集落人口の半数を超え、社会的共同生活の維持が困難な状態に置かれている集落)に生徒を1週間送るなど、地域とつなげる授業のコンサルタントを行います。生活保護だけに的を絞ることもあります。

同時に、私たちは大学・専門学校向けの中退予防コンサルティングを行っています。
初年次教育で、3割ぐらいの学生が辞めてしまう大学もあります。
大学や専門学校を中退して社会的に困難な状況になってしまう若者もいるので、それを食い止めるために大学と共に取り組みを行っています。
私たちが入り、半分ぐらい中退率を下げたところもあります。大学側にとっても、収益の面でメリットが大きいです。

私たちのビジョンは、「一人ひとりの若者が希望を持てる社会」です。
私たちがメインターゲットにしている子どもたちは、非常にポテンシャルが高いのです。
十代でいじめ体験などの挫折をしているだけですから、仕組みがあれば社会でも活躍できる人材になると思います。

私たちは現在、4期目です。たくさんの人たちに支えられています。
私立学校からは授業料がいただけますが、公立学校ですとほとんど授業料はいただけません。この部分は企業スポンサーなどに助けていただいています。最近は教育に関心のある人が増えていますね。
カリキュラムの内容は学校により違い、学校によっては、中退率を下げてほしい、生徒とのつながりをどうにかしたいなど、いろいろあります。

コンポーザーを務めるボランティア向けの研修は、土日を利用して行っています。ボランティアさんのコミュニティーもあります。
学校によりますが、学校にはこちらから先にアプローチします。
最近は学校からのアプローチもあります。東京の方からも最近アプローチがありました。
お手伝いしていただいている方はボランティアです。これは創業から変わっていません。

藤岡: 見学したい方がいれば、見学できるのですか?

今井: 1回目の授業以外は、学校の許可があれば見学できます。定時制高校は厳しいところもあります。

地域の方々に若者たちを支えてほしい

D×P理事長 今井紀明氏藤岡: 企業や経営者に対して、何か提案はありますか?

今井: 現在、地域の定時制高校でつながりを求めています、
企業にもよりますが、社員さんが自分自身の気持ちから私たちのプログラムに参加していただきたいです。39歳を超えていても構いません。
私たちは、地元での人のつながりを重要視していて、地元の大人に参加していただけると嬉しいのです。
インターンシップも行いたいですね。企業によって受け入れ形態が違うので、難しいところはありますが。
現在は通信制高校と定時制高校をやっていますが、定時制の割合が多いですね。これからは、通信制も広がっていくと思います。

藤岡: これからのビジョンを教えてください。

今井: 高校でチャレンジする場所を作る取り組みはしていますが、この3年間で規模を増やしていくことと、それ以外で、少年院や外国人の子どもたちなどと関わっていくことができないかと考えています。

藤岡: そう言ったNPOは少ないですね。

今井: そうですね。現在、NPOとの連携もしていて、学校に設置した、居場所のようなカフェをNPOが運営しています。ここの社員さんに私たちの活動に参加してもらっていたりもしています。
私たちの強みは寄付や自分たちの収益でやっていますから、余計なしがらみがないことです。それを活かしていきたいです。
寄付は個人と企業からいただいています。企業さんからは一口いくらという形で、個人の方からは月額料金をいただいています。

藤岡: なるほど。これからさらに勉強させてください。よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
D×P理事長 今井紀明氏

プロフィール 今井紀明氏

D×P理事長 今井紀明氏認定NPO法人D×P(ディーピー)理事長
1985年、北海道札幌市生まれ。立命館アジア太平洋大学卒。
高校生の時、イラクの子どもたちのために医療支援NGOを設立。その活動のために、当時、紛争地域だったイラクへ渡航。その際、現地の武装勢力に人質として拘束され、帰国後は「自己責任」の言葉の下、日本社会から大きなバッシングを受ける。
結果、対人恐怖症になるも、大学進学後、友人らに支えられ社会復帰。
偶然、通信制高校の先生から通信制高校の生徒が抱える課題に出会う。
親や先生から否定された経験を持つ生徒たちと、自身のバッシングされた経験が重なり、「何かできないか」と、任意団体Dream Possibilityを設立。
大阪の専門商社勤務を経て、2012年にNPO法人D×Pを設立。
定時制高校・通信制高校の高校生向けのキャリア教育事業を関西で展開し、「一人ひとりの若者が自分の未来に希望を持てる社会」をめざして行動している。

インタビューア 藤岡俊雄氏

藤岡俊雄氏一般社団法人 公益資本主義推進協議会(PICC)アドバイザー。
1961年大阪府生まれ。2002年より、株式会社シーエフエス 代表取締役。
2010年より「大久保秀夫塾」代表世話人に就任し、全国経営者320社の構築 、東北・関東・中部・関西・中四国・九州で塾の開催を続けている。
2012年に「経営実践研究会」を創設し、理事長就任。全国の経営者(現在約150社)に講演会を活動している。

 

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